喉の疾患

咽喉頭異常感症laryngopharyngeal hypersensitivity

咽喉頭異常感症について

  • のどに異常感があるのに、通常の耳鼻咽喉科診察で病変を認めないものを差します
  • 咽喉頭異常感症の患者はとても多いですが、重大な病気のことは多くありません
  • 異常所見がなくても、異常感が出る可能性があることを理解することが重要です
  • 胃酸の逆流やストレスなど、様々な原因が考えられています
  • 症状があれば定期的に診察を受けましょう

咽喉頭異常感症とは

咽喉頭異常感症とは、「患者が咽喉頭に異常感を訴えるが、通常の耳鼻咽喉科診察では訴えに見合うような器質的病変を認めないもの」と定義されています。
のどの違和感で耳鼻咽喉科を受診する患者さんは、約5%はと少なくありませんが、そのほとんどは異常所見が無く、咽喉頭異常感症と診断されています。

【画像】咽喉頭異常感症とは

咽喉頭異常感症の症状

「詰まった感じ」「ゴルフボールみたいな球が入っている感じ」「引っかかる感じ」「イガイガする感じ」「締めつけられているような感じ」など、症状は患者さんによって異なります。

のどの異常感の原因

  1. 悪性腫瘍
    のどの異常感で受診する患者さんが一番に気にするのが、悪性腫瘍(がん)です。但し、のどの異常感がある患者さんのうち、悪性腫瘍の割合は約3%と稀ですから、過度に心配する必要はありません。
    お酒やタバコを多く摂取している(していた)、のどの痛みが続く、固定物が食べづらい、体重が落ちた、などの方は注意が必要です。ただしこれらの症状は、加齢による飲み込む力の低下やストレスなどでも起きますから、内視鏡検査などを行い病変が無いか確認します。
  2. 胃食道逆流
    胃酸(腸液)がのど~食道に逆流し、粘膜を直接または神経を介して間接的に刺激することで症状が出ると考えられています。胸やけやゲップ、乾いた咳などを伴うことがあります。のどの内視鏡検査の他、消化器内科で胃や食道のチェックも考慮しましょう。
  3. 心因性
    ストレスが直接のどの異常感を引き起こす場合と、「症状が良くならない」「医療機関を受診したが原因が分からない」などの理由から不安になり、二次的にのどの異常感が長引いたり、悪化する場合があります。
  4. その他
    副鼻腔炎などで鼻水がのどに回って引っかかる感じが生じたり、アレルギー(喉頭アレルギー)でのどのイガイガ感、乾いた咳が続くことがあります。

咽喉頭異常感症の検査

  1. 内視鏡検査
    のどの異常感でまず大切なのが、悪性腫瘍が無いかをチェックすることです。内視鏡を用いて、鼻からのどの奥まで病変が無いか確認します。悪性腫瘍の他、副鼻腔炎、良性腫瘍、炎症、ポリープが無いかもチェックします。
    のどの奥は入り組んでおり、小さな病変は分からないことがあります。症状が続いていたり、お酒やタバコのリスクのある患者さんなどは、定期的に内視鏡でのチェックをお勧めします。また食道や胃のチェックが必要と判断した場合(または希望される場合)、消化器内科を適宜紹介いたします。
  2. 問診
    異常感の性状(「イガイガ」なのか、「詰まった感じ」なのか)、咳、胸やけ・ゲップ、お酒・タバコの習慣、家族や知人が最近悪性腫瘍になって心配、ストレス、他の医療機関で異常が無いと言われて余計不安になったなど、気になることがあれば問診でしっかり伝えるようにしましょう。
  3. その他の検査
    貧血や甲状腺腫、首の骨の突出などでのどの異常感が出ることがあります。そのため、採血やX線検査などをお勧めする場合があります。

咽喉頭異常感症の治療、対処法

まず内視鏡検査を受け、のどに異常が無いことを確認します。異常が無い場合、多くはそのままにしても問題が無いことを理解し、安心することが大切です。また原因が分かれば、その病気の治療を行います。胃食道逆流や、ストレス・神経症など、耳鼻科以外の疾患が関与していそうであれば、適宜、適切な診療科を紹介いたします。

【画像】咽喉頭異常感症の治療、対処法

味覚障害Taste disorders

味覚障害について

  • 原因は、亜鉛欠乏、薬剤性、心因性、外傷性などさまざまです
  • 嗅覚低下による風味障害が原因のこともあります
  • 血液検査で亜鉛、鉄の量を測定し、不足していれば補充療法を行います
  • 補充療法の効果はすぐには現れません。少なくとも1か月は続けましょう

味覚は5種類

味覚は甘味・苦味・旨味・塩味(えんみ)・酸味の5種類があり、それぞれ感じるセンサー(受容体)が異なります。

【画像】味覚は5種類

味覚障害とは

    味覚障害には多数の障害パターンが存在します
  • 味覚低下・消失:味覚を感じにくい・感じない
  • 解離性味覚障害:甘味など特定の味覚だけ分からない
  • 異味症:本来とは異なる味に感じる(砂糖が苦いなど)
  • 自発性異常味覚:何も食べてないのに、口の中が苦い
  • 片側性味覚障害:右(左)側だけ味覚を感じない
    その他、周辺の障害として下記のようなものがあります
  • 風味障害:嗅いが分からないことで味が違うように感じる
  • 舌痛症:舌がヒリヒリ・ピリピリ痛む

味覚障害の原因

味覚障害を原因別に分類すると、大きく以下の4つに分けられます。

  1. センサー(受容体)の障害
    舌には味細胞が集まった味蕾というセンサー(受容体)があり、このセンサーの維持に亜鉛が大切だということが分かっています。そして亜鉛が不足することでセンサーの障害が生じます。味蕾は舌全体に広がっているので、舌の片側だけでなく、全体的に味覚の異常を感じることが一般的です。
  2. 神経(線維)の障害
    味覚の神経には鼓索神経と舌咽神経があり、いずれも左右2本の神経が片側ずつの味覚を支配しています。左右の神経が同時に障害されることはほぼありませんので、「右側で味がしない」といったように、片側の味覚障害が一般的です。特に顔面神経の一部で中耳内を通る鼓索神経の障害が多いことから、片側の味覚障害では、顔面神経や中耳の病気をチェックする必要があります。
  3. 心因性味覚障害
    味蕾や神経の異常が認められず、心因的要因が考えられる場合、心因性味覚障害を考えます。心因性味覚障害の患者さんは、舌の痛みや口の渇き、自発的異常味覚を伴うことが多いとされています。
  4. 風味障害
    味覚は正常ですが、嗅覚が低下しているために味が違うように感じる状態です。風邪のウイルスで嗅覚が低下した時などにみられます。

味覚障害の治療

亜鉛補充療法

味覚障害の原因はさまざまですが、治療法が確立しているのは、亜鉛欠乏に対する亜鉛補充療法です。
広く行われているのは亜鉛製剤を用いた補充療法です。不足した亜鉛がしっかり補充されて効果を発揮するまでには時間がかかります。治療継続の目安は3か月を考えましょう。
亜鉛製剤を飲むと気持ち悪くなる方、食事で亜鉛を補充したい方は、亜鉛が豊富な食べ物(肉類(赤身)、魚介類(青魚や牡蛎)、海藻類(海苔、わかめ)、豆類(納豆、枝豆)など)で補充することも可能です。亜鉛製剤、食事いずれにも言えることですが、亜鉛はそのままでは吸収されにくいため、タンパク質、ビタミンCやクエン酸と同時に摂取することで吸収率を高めるようにします。

【画像】亜鉛補充療法
神経障害

まず原因疾患の精査を行い、原因疾患の治療を優先して行います。

風味障害

原因となる嗅覚障害の治療を行います。

心因性味覚障害

心因性味覚障害が疑われる場合、相談の上、適宜精神科や心療内科をご紹介いたします。