花粉症Hay fever
花粉症について
- 主な症状は、鼻水、くしゃみ、鼻づまり、目のかゆみです
- 咳、顔のかゆみも起こることがあります
- 初期治療が効果的とされています
- 花粉を“入れない”対処法も効果的です
花粉症とは
花粉症は花粉によるアレルギー性疾患です。花粉の表面にある抗原と呼ばれる蛋白質に反応し、人間の体が追い出そうすることで、鼻水やくしゃみ、目のかゆみなどの症状が現れます。アレルギー反応はある日突然始まることがあり、「今まで無かったのに、去年から急に花粉症になった」という人がよくいます。
2008年の全国疫学調査によると、花粉症の有病率は約30%でした。花粉症の有病率は増加しており、近年では国民のおよそ半分が花粉症と推測されています。
主な症状
鼻の三大症状(くしゃみ、鼻水、鼻づまり)、目の症状(かゆみ、涙、充血など)の他、のどや皮膚のかゆみ、咳などの症状が現れることがあります。
おもな花粉症の種類と時期
- スギ科(スギ・ヒノキなど)
スギ・ヒノキは同じスギ科の樹木です。2~5月まで注意が必要です。 - イネ科(カモガヤ・オオアワガエリなど)
河原や公園など、雑草の多い地域において5-6月に多く飛びます。 - キク科(ブタクサ・ヨモギなど)
河原や公園など、雑草の多い地域において9月に多く飛びます。
花粉症の薬物治療
薬物治療では、右の4要素を考慮しながら、患者毎に治療内容を決めます。
- 症状の強さ:
- 軽症であれば、軽めの薬1種で充分ですが、重症の方は治療を強化をした方が良いでしょう。
- 花粉の数:
- 花粉の飛ぶ量と症状は比例するとが多いので、「飛散量が少ない時は軽めに、本格飛散の時はしっかり」と治療内容を柔軟に変化させることも可能です。
- 眠くなりやすい/車を運転する:
- 「強い治療=眠くなる、運転できない」ではありません。複数の薬剤を組み合わせることで、眠くならずに効果の高い治療内容も選択可能です。
- 過敏性:
- 鼻や眼の過敏性が亢進しやすい人の場合、1回症状が出たあとから治療を行っても中々症状が抑えられないことがあります。過敏性が亢進しやすい方は初期治療(花粉が本格的に飛び始める前から治療を行う)によって、症状をかなり抑えられる可能性があります。
その他の対処法
対処の基本は「体に入る花粉を減らす」です。 外出時は花粉用メガネやマスクを着用し、花粉の付きにくい衣類を着ます。帰宅時は玄関前で花粉を払い、外着、メガネ、マスクは玄関で外し、リビングに持ち込まないようにします。
また、布団の天日干しにも注意が必要です。布団乾燥機は布団への花粉の付着を大きく減らすことができお勧めです。天日干しをする場合、花粉は昼の12時頃と夕方の18時頃に多く飛ぶとされているので、早めの時間帯に干し、10時までにしまうのが良いでしょう。もちろん、しまう前には十分花粉をはらいます。
花粉は、「雨の次の日」「晴れている」「気温が高い」「風が強い」などの条件が重なると多く飛ぶと言われています。花粉の飛散情報などを参考にしながら、外出する日、時間を選ぶのも効果的です。
副鼻腔炎Sinusitis
副鼻腔炎について
- 副鼻腔に炎症が起きることで、鼻閉、鼻汁、痰、頭痛などの症状が生じます
- ウイルス・細菌・カビ・免疫機能の異常など、様々な原因で生じます
- 治りづらく・再発しやすいので、良いと言われるまでしっかり通院しましょう
副鼻腔とは
鼻の中には、鼻腔と呼ばれる空気の通り道が真ん中にあり、その脇には副鼻腔と呼ばれる空気の入った小部屋が複数存在します。下図のように副鼻腔の出入口は狭くなっています。
副鼻腔炎とは
副鼻腔炎は副鼻腔に炎症が生じることで、鼻づまりや色の付いた鼻水・痰(膿性鼻汁、後鼻漏)、咳、頭痛、頬部痛、においの低下などをきたす疾患です。
副鼻腔に炎症が起こると、狭い出入口(上図)は腫れてさらに狭くなります。すると副鼻腔の中は風通しが悪くなり、ますます菌が増殖しやすくなるという悪循環が生じます。このため重症になると中々治りません。
急性副鼻腔炎と慢性副鼻腔炎の違い
- 急性副鼻腔炎
症状が出てから無くなるまでが1か月以内のものを急性副鼻腔炎と呼びます。
多くは風邪などのウイルスによって弱った粘膜に、細菌が感染することで生じ、色のついた鼻水、鼻づまりの他、発熱や、痛みなどを伴うことがあります。 - 慢性副鼻腔炎
症状が無くなるまで3か月以上かかるものを慢性副鼻腔炎と呼びます。痛みは無いことが多いものの、慢性的な炎症により粘膜の腫脹が徐々に進んでポリープ(鼻茸)となり、鼻づまりやにおいの低下が起こりやすくなります。
副鼻腔炎の原因と治療
- 風邪(ウイルス)
健康な人の鼻の中にも細菌が存在していますが、粘膜が正常であれば問題はありません。しかし風邪(ウイルス)によって粘膜がダメージを受けると、細菌が増殖しやすくなり、炎症が起こります。多くは抗生物質等の薬剤で改善しますが、症状の強い場合、薬の効果に乏しい場合は手術を考慮します。 - 歯の炎症(歯性上顎洞炎)
健康な人の歯は丈夫な骨で支えられていますが、虫歯や歯周病を放置していると、歯を支えている骨が徐々に溶けていきます。上の歯の根っこは副鼻腔に近く、炎症が進行すると副鼻腔炎が生じます。歯・副鼻腔双方の治療を考慮します。
- カビ(副鼻腔真菌症)
カビも細菌同様、鼻の中に常在していますが、高齢者や免疫機能が低下している人の一部は増殖して副鼻腔炎の原因になることがあります。抗生物質が効きづらく、症状があれば手術を行うことが一般的です。画像検査で偶然見つかった無症状の場合は様子をみることもできますが、慎重な経過観察が必要です。 - 好酸球性副鼻腔炎
両鼻に好酸球(白血球の一種)の多い鼻茸がたくさんでき、手術してもすぐ再発する副鼻腔炎です。成人発症の気管支喘息に合併することが多く、共通点も多いことから「鼻の喘息」とも呼ばれます。
原因は不明ですが、免疫機能の異常が原因と考えられています。二次的に細菌性の副鼻腔炎を合併することもあります。
点鼻ステロイド薬、抗ロイコトリエン拮抗薬などによる保存的治療が一般に行われますが、治療効果、病状によっては手術をお勧めすることもあります。「鼻の喘息」と呼ばれるように体質的なものですから、調子が良くなったらすぐ薬を止めるのではなく、薬を続けて良い状態を維持することが大切です。
鼻出血Nosebleed
鼻出血について
- 鼻の中にある血管が切れて出血します
- 鼻出血の多くは、自宅でできる対処法で対応可能です
- 「勢いが強い」「奥から出血」「血が止まりづらい」場合、専門的な対処を考慮します
鼻出血とは
鼻出血とは、文字通り鼻からの出血です。
図のように、鼻の中はとても深い構造をしていますが、ほとんどは入り口付近の(キーゼルバッハ部位)から出血します。
- キーゼルバッハ部位に多い理由として、
- :血管が集中しているから
- :入り口に近く、外からの刺激で粘膜が傷つきやすいから
鼻出血の原因
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鼻をいじる、鼻を強くかむ
鼻をいじったり、鼻を強くかむことで 粘膜が傷つき、出血しやすくなります。鼻をよくかむ病気(花粉症など)があれば、普段から治療を行っておきます。 -
乾燥
鼻の中は潤った粘膜に覆われています。冬が近づいて外気が乾燥してくると、入り口に近いほど粘膜が乾燥し、荒れて傷つきやすくなります。マスクや加湿器、ワセリンの鼻内塗布などの対策が有効です。
自分で行う対処法
- 座って、うつむく
座ってうつむくことにより、のどに回った血が吐き出しやすくなります。また出血部位が心臓より高くなるので、出血が減るメリットもあります。
あおむけは、心臓と出血部位が同じ高さになって出血が増えるだけでなく、のどに回った血を吐き出しにくくなります。 -
手で小鼻を広く、きつく圧迫する
よくティッシュや綿花などを詰めて止血する人がいますが、いずれもゴワゴワした素材なので粘膜を傷つけ、再出血の原因になることがあります。
ちょうど小鼻のあたりにキーゼルバッハ部位がありますので、そこを広くしっかり指で圧迫します(痛いくらい)。こうすれば粘膜同士が触れ合い傷つきません。 - のどに回った血はゆっくり吐き出す。深呼吸する
血を沢山飲み込んでしまうと、気持ち悪くなって嘔吐(吐血)してしまいます。座って、うつむいて、深呼吸し、のどに回った血はゆっくり吐き出します。 -
気分が悪くなったら横向きで寝る(できれば足を持ち上げる)
出血が続くと、脳貧血になって意識を失うことがあります。視界がぼやけてきたり、冷や汗が出てきたら脳貧血のサインです。座っていてもすぐに横向きに寝転んで、さらに脳に血液がいくように荷物や布団などで足を上げます。 - 長い時間止まらなければ、救急医療機関への受診を考慮する
①~③の処置を約30分続けても勢いが治まらない、または④が発生した場合、鼻出血が対応可能な救急医療機関への受診を考慮します。その場合、その医療機関が対応可能か、受診前に必ず電話等で確認してください。 - 鼻の中が荒れていれば軟膏で治す
「少ないけど時々出る」「ティッシュに血が付く」は粘膜が荒れているサインです。手を洗ってから、ワセリンを示指の第一関節の深さまで1日1~2回、鼻内に塗布します。余計傷つくので、かさぶたがあっても取ってはいけません。